なぜテニスボールの空気圧は弱くなるのか?
現在、趣味で硬式テニスをしているのですが、サークル仲間から「なぜテニスボールの空気圧は使用し続けると弱くなるの?」と聞かれたので、理系大学出身の知識を活かして説明しました。
ここでは、その時に説明したことをまとめておきたいと思います。
そもそもテニスボールの構造はどうなってるの?
テニスボールの構造は、下の画像のように中心から空洞→ゴム→フェルト(布)となっています。
空洞には窒素ガスが1.8気圧となるように充満されています。
ちなみに、製造過程は窒素ガス発生剤を入れて、半球型のゴムを圧着して球として、外側をフェルトで覆って作成されているそうです(窒素ガスが完全に発生すると、空洞が1.8気圧となる)。
テニスボールの空気圧が弱くなる原因
テニスボールは、使用し続けても使用せずに静かに放置していても、数か月すると空気圧が弱くなり練習に使えなくなります。
これは、空洞に充満されている窒素ガスが、少しづつゴムの構造の隙間(ゴムを構成する粒子と粒子の間にできるミクロな隙間)から空気中に出ていくからです。
化学を履修した人はわかると思いますが、窒素ガス=窒素分子はとても小さな粒子なので、人間の目では見えない小さな穴をすり抜けることができます。
数か月で空気圧が1.0となる
- 空気中の空気圧は1.0
- テニスボールの中の空気圧は1.8
なので、時間の経過とともにテニスボールの中の窒素ガスは空気中に逃げていき、やがてテニスボールの空気圧は空気中と同じ1.0となって空気圧が弱くなるという結果になります。
その期間はだいたい3か月くらいといわれているので、3か月経過したボールはだいたいやわらかくなります。
新缶に入っているテニスボールの空気圧は弱くならない
なぜテニスボールの空気が抜けるのかは、空気中の気圧は1.0で、テニスボールの空気圧は1.8なので、密集度の大きい物質は密集度の小さい方に拡散するというエントロピー増大の法則から空気中に逃げていきます(空気中とテニスボールの空気圧が同じになるまで窒素ガスが抜けていく)。
なお、新缶に入っているテニスボールは時間が経過しても空気圧がなくなりません。
それは、新缶の中が窒素ガスで1.8気圧となっていて、テニスボールの中の気圧も1.8なので、窒素ガスの出入りがないためです(厳密には、圧平衡に達しているので、テニスボールの中から出ていく窒素ガスと、テニスボールの中に入ってくる窒素ガスの量が等しいので、見かけ上空気の出入りがない状態になります)。
テニスボールの空気圧は復活できる!?
こういう化学的な知識があると、テニスボールの空気圧を復活させることも理論的に可能となります。
それは、ある容器の中に柔らかくなったテニスボールを入れて、その容器の中を窒素ガスか空気(成分の8割が窒素ガス)で1.8気圧にしてあげれば、
次はテニスボールの空気圧が弱くなった時と逆の現象が起きて、テニスボールの中に空気が入ってきてテニスボールの空気圧が元に戻せます。
もちろん、数か月かけて空気圧がなくなったので、それを戻すためにも数か月かかるので、容器を作る手間と時間的制約で取り組む人は少ないと思います。
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